――岸田さんがキャラクターを描かれるとき、女の子たちの服のデザインはファッション誌などを参考にされたりするのですか？

岸田：
「いろいろですね。オシャレな格好や私服にこだわりがあるのではなく、なるべくナチュラルであること。その辺を普通に歩いているような感じが一番かわいいのかなと思っているので、意識しているのは“身近感”です」

関口：
「やっぱり、そういうところにセンスが出ると思うんですよ。資料などに頼ろうとすると変にゴチャゴチャしてしまう。でも岸田さんの言われる“身近感”というのは意外と難しくて、地味すぎずシンプルでというのは、なかなか数が出ないんです。今描いている普段着や寝巻きなどは必然的にシンプルにしていますが、この先もっとパターンが増えていくと、どれだけ描けるか悩みどころでもありますね」

岸田：
「実は先ほど夏服などを依頼されたんですが、こちらもシンプルにしようと思っています。でも同年代の女の子が4人いるので、着ているものがハッキリ分かれていたほうが面白いですよね。今ファッション誌でよく書かれている、○○系とかをキャラクターにあてはめたほうが分かりやすいんじゃないかなって。ただ最初から設定もあって、結名（和倉結名）はギャル系のファッション。緒花は普通の女の子という感じで、オシャレには一般の女の子並みに気を使っていると。民子はあんまり気を使ってなさそうという」

関口：
「ちなみにお姫様みたいな服を着た民子の絵もありましたよね？」

岸田：
「あれは冗談で描いたんですよ（笑）。もしかして誰の目も気にしないという状況があったら、そういう服を着てしまうんではないかなって思って描いてみました。着ている服って、そのキャラクターのバックグラウンドが出ると思うので、そういうことを考えているときが一番楽しいんです」

関口：
「菜子は水泳が得意などアクティブな一面もあるから、動きやすさ重視、とまではいかないけれど、あまり着飾らないかもしれないですよね」

岸田：
「僕の中で菜子は、大人になったら意外と私服はコンサバっぽい格好をするのでは？ という気がしています。普通のOLみたいな格好になっていくのではないかなって」

関口：
「なるほど。今思うと、民子の私服を披露する場があまりないですね。ちょっと寒そうだから上着必要となっても、じゃあ喜翆荘（きっすいそう）のジャージにするかって（笑）。『花いろ』は、キャラクターは綺麗、かわいい系が多いのに、服装は意外と地味なのかも。岸田さんはリアルな世界でも、シンプルな服がお好きなんですか？」

岸田：
「そうですね、地味なほうが好きです。ただ絵として映えないので仕事に活かす機会はないんですけれども……、そういう意味では『花いろ』は、自分のストライクですね（笑）」

――物語の中で、こういうシーンでこういう服装を描きたいという要望はありますか？

岸田：
「そうですね……、でも結構いろんなシーンがありますからね。水着もありますし。今はこれが描きたいとか、これがあればいいなとかいうのはないです。逆にあがってくる画を見るのが楽しみですし、もし欲しいと思ったら、使われるかどうかは別にして描いてしまえばいいわけですからね」

関口：
「それはぜひ送ってください。描いただけだともったいないですから、どこかで使います！」

――最後にファンの方にメッセージをお願いします。

岸田：
「今のアニメにはめずらしいぐらいキャラクターの幅が広い作品です。中心となる女の子たちはもちろん、男の子、おじさん、おばさん、いろいろなキャラクターにちゃんとスポットがあたるので、見ていて飽きないと思います。女の子以外にもキャラクターをデザインさせてもらったので、登場人物全員を見てもらいたいですね。あと、みなさん“静かな日常のモノ”のような作品だと想像しているかもしれませんが、実は違うんだよって」

関口：
「あと温泉旅館が舞台ならば、当然毎回入浴シーンもってなりますが、実はそれほど…（笑）。想像できる範囲での旅館モノではないかもしれないです」

岸田：
「変化球というか、いい意味で新しい作品になっていると思います。萌えアニメと思っている人には違う楽しみ方ができると思いますし、『true tears』を想像している人がいたら、それはそれで普通のアニメとして楽しめる。どういう化学反応が起きるか楽しみですね」

関口：
「岸田さんの原案に、安藤さんの動きの見せ方やシリーズ構成の岡田（麿里さん）のテイストが加わって、これまでにないアニメに仕上がっていると思います。ひと言で言うのならば“恋愛モノではなくて青春モノ”。見ていただいた方には、『え、この次どうなるのって!?』って、次回予告を見るだけでもワクワクする感覚を味わってもらえると思います。ぜひ楽しみにしていてください」