スペシャル花咲くいろは

■アニメから誕生した「湯涌ぼんぼり祭り」

2011年10月9日、日曜日。石川県金沢市湯涌温泉街で「湯涌ぼんぼり祭り」が開催されました。もともと『花咲くいろは』の作中に架空の神事として登場したこのお祭りは、小さな女の子の神様が神無月(かんなづき)に出雲に帰る時の道しるべとして、のぞみ(願いごと)を書いた札を下げた「ぼんぼり」で送り出す、という設定でした。それを湯涌温泉観光協会さんからの申し出により、湯涌温泉水害復興3周年記念に本物のお祭りとして開催することが決定。作中の設定と同じく、神送の儀やのぞみ札お焚き上げが行なわれることになりました。またそれに先立ち2011年7月23日には、「ぼんぼり点灯式」と「のぞみ札奉納」も湯涌稲荷神社で開催されました。

本祭当日は、10月ということもあり早朝は息が白くなるほどの冷え込みでしたが、日差しは温かく、日中は汗ばむ陽気に。メインとなる20時からの「ぼんぼり祭り巡行」の前には、nano.RIPEのライブや出演キャストによるトークショー、キャラクター原案の岸田メルさん、コミカライズを担当されている千田衛人先生によるサイン会、インターネットラジオ「ぼんぼりラジオ 花いろ放送局inぼんぼり祭り」の公開録音、さらには『花咲くいろは』グッズや「湯涌ぼんぼり祭り」記念グッズの販売など、アニメ製作委員会による協力イベント「花いろイベント IN ぼんぼり祭り」も開催され、地元の金沢はもとより、遠方からも多くのファンが駆けつけました。

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当日は金沢駅から臨時のシャトルバスも運行。またお祭りにあわせて、湯涌温泉街のバス停やバスの行き先が「湯乃鷺温泉」に!! これにはファンはもちろん地元の方もビックリしたのでは!?

■ファンが一体となって盛り上がったnano.RIPEのオープニングライブ

「花いろイベント IN ぼんぼり祭り」のオープニングを飾ったのはnano.RIPE。ライブ会場となった金沢市立湯涌芝原小中学校の体育館では、『花咲くいろは』の絵コンテや美術ボードなどの設定をはじめ、メインビジュアルやポスター、各種雑誌版権のパネル、来年春にグッドスマイルカンパニーから発売が予定されている「ねんどろいど」などが展示された「花いろ展」もあわせて開催されました。

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展示会の様子。原画や美術ボードなどの貴重な資料や、今まで描かれたイラストなどが所狭しと飾られており、多くの方がじっくりと見ていました。また駅看板の前で写真を撮る人も。

11時からのライブは、『ハナノイロ』でスタート。続いて『夢路』『月影とブランコ』と『花咲くいろは』ではお馴染みの曲も演奏され、拳を突き上げながら一緒に楽しむファンのボルテージはあがります。「普段ならまだ頭が眠っている時間ですが、今日は朝3時に起きて一番の飛行機で湯涌温泉に来たので気分は夕方です!!」というきみコさん(Vo./G.)。「ライブで体力を使い果たしてぼんぼり祭りをのんびり楽しむのもいいと思います」と挨拶。また1stフルアルバム『星の夜の脈の音の』が10月19日に発売されることが決定したと告げると、そのアルバムの中から『セラトナ』『ノクチルカ』を披露。会場である体育館が揺れるぐらいファンのテンションもMAXに。さらに『花咲くいろは』第2クールのオープニング主題歌であり、nano.RIPE最速の曲である『面影ワープ』をはじめ、ほか4曲を熱演しました。
そして興奮冷めやらぬファンのアンコールに応えて再び登場したnano.RIPE。「最後は一緒に歌えたら」と言うきみコさんと共に『ハナノイロ』のイントロが!!  「みなさん心の、ほんの少しの隙間でも埋められることができたらと思います」というきみコさんの言葉のように、nano.RIPEとファンがひとつになって熱唱する熱いライブでした。

(set list)
『ハナノイロ』『夢路』『月影とブランコ』『セラトナ』『ノクチルカ』『面影ワープ』『バーチャルボーイ』『細胞キオク』『パトリシア』『世界点』

アンコール
『ハナノイロ』

(全11曲)

■大宴会場で行なわれたキャストトークショー

ライブ会場をあとにして9時から開場していた物販・飲食会場に向かうと、お客さんが絶えることなく賑わっており、中には早くも完売の文字を掲げているところも! アニメに登場していた「みんちのオムライス」(700円)や、ハート型の紅ショウガが乗った焼きそば(26話に登場/500円)などが大人気でした。

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物販ブースには長蛇の列。物販・飲食会場の外でもグッズや食べ物が販売されており、緒花がファミレスで飲んでいたコークティー(200円)もありました。

13時からは、湯涌温泉の中心街にある温泉旅館「かなや」の6階大宴会場で、「出演キャスト トークショー」が開催されました。来場者は畳に座って観覧するという温泉旅館らしいスタイルで始まったトークショーには、松前緒花役の伊藤かな恵さん、鶴来民子役の小見川千明さん、押水菜子役の豊崎愛生さん、和倉結名役の戸松遥さん、輪島巴役の能登麻美子さんが登場。まずは皆さん湯涌温泉街が初めてということで、その印象を尋ねられると、

「初めて来ましたけれど、どこか見覚えのある風景でとても素敵な場所。少しドキドキしています」(伊藤さん)

「実はかな恵さんにお酌をしてもらい、早速地元のお酒をいただきました(笑)。とっても美味しかったです」(小見川さん)

「小道や旅館から緒花ちゃんたちが飛び出してきそうでワクワクしています。『花咲くいろは』の世界に入り込んだ気分で楽しいです」(豊崎さん)

「ここ知っている!  というところがいっぱいあって、出演者というより作品の一ファンとして楽しんでいます」(戸松さん)

「実際に湯涌温泉に来て、『花咲くいろは』はこの空気感をも描いていたんだなと感じました。いろいろ見入ってしまいます」(能登さん)

また最終話を終えての感想は、

「最終回のアフレコをしたのがすごく前のような気がして……、これで終わってしまうのが本当に寂しいです。でも皆さんとこの空間を共有できるのは嬉しい。寂しいような嬉しいような不思議な気持ちです」(伊藤さん)

「『花咲くいろは』の現場は年齢層が幅広くて本当に家族みたいな雰囲気でした。収録を終える度にまとまっていく感じがとても楽しかった。でも終わってしまうと、家族がひとつなくなってしまったような寂しい感じがします。本当はキャスト全員でここに来たかったのですが……、来られなかった方に今日の思い出をいっぱい伝えたいと思います」(小見川さん)

さらに印象に残ったシーンについては、

「最終回でスイさんが喜翆荘の中を歩くシーン。賑わっていた頃を思い出しているスイさんの顔が本当に穏やかで、見ていて涙が出そうでした。あとは7話の巴の回。絶叫もあり、楽しく演じさせていただきました」(能登さん)

「私は14、15話の修学旅行です。結名のパーソナルな部分が見られて、彼女にはこういう側面もあるんだと気付かされました。また将来どういう大人になるのか楽しみでもあります」(戸松さん)

「一番は18話の人魚姫と貝殻ブラの回です。それまで菜子は仲居さんの仕事がメインで描かれていたのですが、18話では、意外とロマンチックな部分も垣間見られて楽しかった。それにスイさんの貝殻ブラも見られましたしね(笑)。あとはスイと皐月、皐月と緒花という母と娘の関係が好きで、母娘のリアルな会話が印象に残っています」(豊崎さん)

また収録中で面白かった出来事は何ですか?  という質問には、

「11話で緒花が孝ちゃんとファミレスで話すシーンがあるのですが、緒花の『バイト先に可愛い子もいるし……』というセリフに対して、孝一役の梶さんが『そうだな』って肯定したんですよ。台本では『そうか!?』という曖昧な感じのセリフだったので、もちろんNGになったのですが、あれは梶さんの本音が出たなと思いました(笑)」(伊藤さん)

「4話で“民子姫”のイメージカットがあるのですが、実は歌を歌っていたり、『趣味はお散歩♪』みたいなセリフも収録したりしたんです。でもまったく使われなかったですね(笑)。あとこれは本編ではなくドラマCDなのですが、結名のセリフで「朝食欲(あさ、しょくよく)湧かないんだけれども」と言うところを、「朝食欲(ちょうしょくよく)湧かないんだけれども」と言い間違えたのがツボでした(笑)。でも結名だからOKと採用されたんです。音だけ聴くと、「超、食欲」とも聞こえますし日本語って難しいですね」(小見川さん)

など意外なエピソードが。さらに富樫蓮二役の山口太郎さんが、アフレコが始まる前に自分の考えたアドリブが面白いかどうか聞きに来る、現場ではなぜか波子のことを呼び捨で呼ぶ波子ブームがあったなど、ここでしか聞けない話題で会場を盛りあげていました。

そして、もしのぞみ札に願いを書くとしたらどんなことを?  という質問には、

「もう1回『花咲くいろは』をやりたい!!」(伊藤さん)
「劇場版!!」(小見川さん)
「本編の中で作りかけていた映画(16、17話)を観たい」(豊崎さん)

という答えが。そこからはもう少しだけ『花咲くいろは』や自分が演じたキャラクターたちと関わっていたいというキャストの皆さんの気持ちが伝わってきました。そして最後は、

「後ろにいる方の顔も見られて、とても一体感のあるトークショーで楽しかったです。来年もぼんぼり祭りをぜひ開催してもらいたいです」(能登さん)

「湯涌温泉に来て、皆さんと一緒に『花咲くいろは』を振り返ることができて本当によかったです」(戸松さん)

「菜子というキャラクターに勇気をもらって、感謝の気持ちでいっぱいです。『花咲くいろは』と共に、この湯涌温泉も大好きになってもらいたいです」(豊崎さん)

「本当はもっと上手くしゃべれるはずだったんですけれども……(笑)。ぼんぼり祭りがずっとずっと続いていけばいいなと思います」(小見川さん)

「皆さんと一緒にこの空間を共有できて、まるでアニメの中にいるような感じでワクワクできました。のぞみ札の願いが届けばいいなと思います」(伊藤さん)

というメッセージと共に約1時間のトークショーは終了となりました。

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トークショーが行なわれた「かなや」前。玄関先には「四十万スイになりたい」(緒花)、「徹さんにいつか追いつけますように」(民子)などアニメに登場した「のぞみ札」が飾られていました。

■公開録音&スタッフトークショーで新作映像の制作が発表!!

その頃、同じく温泉街にある旅館「秀峰閣」では、キャラクター原案の岸田メルさんとコミカライズを担当されている千田衛人先生によるサイン会が行なわれていました。こちらも会場は畳敷きの宴会場。岸田さんはひとりひとりと握手をしながらサインを、千田先生は自作された可愛い緒花のスタンプと一緒にサインをしながら、駆けつけた約200人のファンとの交流を楽しんでいました。

そして15時30分からは、nano.RIPEのライブ会場と同じ場所で、インターネットラジオ「ぼんぼりラジオ 花いろ放送局inぼんぼり祭り」の公開録音が開催されました。メンバーはキャストトークショーと同じ5人が登壇。お馴染みの「古今東西」から始まり、「のぞみ札に書くお願い事と言えば!?」というお題に「また皆で集まれたらいいな」(伊藤さん)、「劇場版!」(小見川さん)、「健康!」(戸松さん)などそれぞれが回答。そのあとは「緒花が教える湯涌温泉の豆知識」、「民子、菜子、結名の3人による温泉レポート」のコーナーが。また温泉地らしく「『花咲くいろは』の効能」というテーマで、自分にとって『花咲くいろは』どんな影響を与えた作品か、また何を得た作品なのかをキャスト5名が語りました。
さらに「喜翆荘の秘湯だより」「花よ咲け! ユメトーーク!」「湯煙サスペンス 仲居さんは見た!」「みんちのお手軽まかない料理」などのコーナーが続き、大盛りあがりの中、収録は終了となりました。詳しくは後日発売予定の『ラジオCD「ぼんぼりラジオ 花いろ放送局」Vol.3』に収録されますので、楽しみにお待ちください。

一方、同じころ、湯涌稲荷神社前の広場では、監督の安藤真裕さん、10・16・17・23話の脚本や17・23話のコンテ、20話の演出を担当された西村純二さん、5・7話のコンテを担当された岡村天斎さん、プロデューサーでありピーエーワークス代表取締役の堀川憲司さんによるスタッフトークショーがゲリラ的に開催。喜翆荘の舞台についてや、最終話で鉄道の信号が青いままだった理由、各担当話数についての話など、ファンにはたまらないトークが展開されました。

そしてこの2つのイベントのラストにおいて、サプライズとも言える『花咲くいろは』の新作映像制作決定が発表!!  まったく聞かされていなかったキャスト陣の中には、驚きと喜びのあまり泣き出してしまう人も。ぼんぼり祭りに訪れたファンからも、今日一番の歓声があがっていました。

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スタッフトークショーが行なわれた湯涌稲荷神社前。神社には「のぞみ札」を奉納する場所が用意されている。

■作中のお祭りを忠実に再現した「湯涌ぼんぼり祭り」

日が完全に沈んだ20時からは、いよいよ本祭である「湯涌ぼんぼり祭り」が開幕。「ぼんぼり祭り巡行」が行なわれた玉泉工房付近から湯涌稲荷神社付近までの間には、多くのファンが集結。湯涌温泉観光協会の安藤精孝会長、山野之義・金沢市長、『花咲くいろは』でプロデュースを担当した「花いろ旅館組合」の永谷敬之さん、城端むぎや祭協賛会の岩田忠正会長、北陸鉄道株式会社取締役自動車部長の宮岸武司さんらが挨拶し、来年も「湯涌ぼんぼり祭り」を開催したいというコメントも!!  これには集まったファンも大きな拍手で歓迎していました。

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湯涌稲荷神社に集まったファン。ここまで湯涌温泉に人が集まるのは開湯以来のことだとか。

その後は玉泉工房付近から到着したぼんぼりを湯涌稲荷神社前で迎える「神迎の儀」に。この神事は一般来場者の方は見ることができなかったのですが、代わりに湯涌百万石太鼓の実演が披露され、迫力のバチさばきに多くの人たちが圧倒されていました。

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昼間の湯涌稲荷神社(上2枚)と玉泉湖(下2枚)の様子。当日の湯涌温泉は多くのところに「ぼんぼり」が飾られていました。

湯涌百万石太鼓が終わると、湯涌稲荷神社からぼんぼりを持ち狐の面をかぶった2人に導かれながら、小さな女の子の神様が現われ、玉泉湖まで神様を送る行列「神送の儀」が出発。「のぞみ札」が入ったかごも続き、多くの来場者に見守られながら玉泉湖までをゆっくりと行進していきました。

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玉泉湖に到着すると、湖畔の浮きステージで祝詞奏上後、「のぞみ札」が入ったかごの炊き上げに。皆の望みを天まで届けるのように大きくあがる火柱、鏡のようにぼんぼりを映し出す湖畔、そしてお祭りを見守るように空に浮かぶ丸い月と、アニメと同じよう神秘的な光景がそこにはありました。

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祝詞を奏上。玉泉湖には安全を考慮して入場規制があったのですが、湯涌稲荷神社前、イベント広場に大きなスクリーンが配置され、「神送の儀」や「のぞみ札お焚き上げ」などを見ることもできました。

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お炊き上げが終わると、お祭りも終了。こうしてスタッフや湯涌温泉街の人々、そして多くのファンによって作り上げられた記念すべき第1回目の「湯涌ぼんぼり祭り」は幕を閉じました。お祭りの余韻に浸りながら坂を下り、帰路に着く方たちを見ていると、アニメから生まれたこのお祭りが、5年、10年、100年も続くのではないかと思わずにはいられませんでした。