――脚本を読まれていかがでしたか?
千田:
最初、孝ちゃんとの掛け合いのシーンが多くて、これは恋愛モノかな!?ツꀀ と思っていたら最後のほうで祖母のスイさんに平手打ちをされていて、なるほどこういうお話かと(笑)。
今まで4コマ漫画を描いていたので、ストーリーモノはこの『花咲くいろは』が初めてだったんです。コマ割りもあまり経験がなくて……その点で不安もあったのですが、とりあえずやってみようと。湯本さんからもいろいろアドバイスをいただきました。『花咲くいろは』の持つイメージやワクワク感をどうやったら伝えられるだろうと、試行錯誤しながらコマ割りや構成などを一緒に考えて、それこそ1~3話は描いては修正してを繰り返しながら仕上げました。
やっぱり上手く自分の中でハマるコマが描けたときや、バランスよく見開きが構成できたときなどは、描いていて楽しくなりますね。
――実際に描いていて難しいと思う点はどこでしょうか?
千田:
結名の縦ロールは描いていて楽しいですのですが、描いていくうちにどんどん緒花の髪が短くなってきてしまったり、民子のポニーテールが頭の上のほうにいってしまったりしてよく悩んでいます(笑)。あとは徹がイケメンにならなくて難しいですね。なるべく岸田さんの絵の雰囲気を崩さずに描こうと心がけているのですが、自分が描きやすいように変わってきているような気がします。
やはり元の絵(岸田さんの原案)が可愛いらしいので、なるべくそのイメージを壊さず、自分らしい部分も出せていければと思っています。
湯本:
あとは、やはり民子の決め台詞である「サンナクチ」(アニメでは「ホビロン」)じゃないでしょうか
千田:
そうですね(笑)。実は「ホビロン」は、シリーズ構成の岡田さんが考えに考えられて作られた台詞で、思い入れの強い言葉なんだそうです。当初はコミック版でも「ホビロン」だったのですが、プロデューサーの堀川さんが「ホビロン」はアニメを初出しにしたいとお願いされまして。でもコミック版のほうが先行していますから、これは変えるしかないなと。湯本さんがいろいろ考えてくださいましたね。
湯本:
「ホビロン」は、“ほんとに、びっくりするほど、論外”という言葉以外に、アヒルの孵化しかけた卵、まだ成長しきっていないヒナという意味合いも含んでいて、緒花にピッタリなんですよね。そこまでピッタリな言葉を捜すのは難しくて……ギリギリまで考えたのですが、結局見た目が気持ち悪い食べ物にという方向で落ち着きました。それでサンナクチ(韓国料理のタコの活づくり)としたんですが、プロデューサーである、ピーエーワークスの堀川さんに「どうでしょう?」とお聞きしたら、「いいと思います。でもサンナクチって美味しいんですよね」って(笑)。
千田:
でもやっぱり「ホビロン」のほうがしっくりきますよね……、今度変えようかな、民子が「新しく考えたから、このホビロン!」とか(笑)
『花咲くいろは』1巻より。
――描かれていて好きなキャラクターは誰ですか?
千田:
女の子だと、結名ちゃんが個人的に好きですね。つかみどころの無い感じがツボで、ゆるキャラのようなところもある。14、15話で今までとはちょっと違う結名が見られて嬉しかったです。男性キャラクターで気になるのは、4話で民子に告白して玉砕した男の子。これは本当に個人的な趣味で割と大きなコマで描いてしまいました(笑)。
――そういえば1話のアフレコを見学されたんですよね
千田:
はい。昔からアニメはよく見ていたんですが、アフレコ現場にお邪魔したのは初めてで、こういう場所で録っているんだと感動しましたね。本当は写真もいろいろ撮りたかったんですけれども、邪魔になると思いそこは自重しました(笑)。
アフレコ現場を見せていただいたことで、キャラクターのイメージはつかみやすくなりました。緒花だったらこのシーンでは、こんな感じのセリフを言うだろうなとか、それこそコミック版のセリフは、声優さんの声でイメージしながら描いています。
――手描きとデジタルはどのぐらいの割合でしょうか?
千田:
半々ぐらいですね。主線などはアナログで描いて、トーンなどはデジタルで処理をしています。たぶん今のアニメーションの製作工程、原画などは手描きで塗りはデジタルと似ているんじゃないでしょうか? でもなかなか完全にデジタル化にはならないんですよね。やはり線は手描きのほうが早いですし、パソコンで描くとどうしてもツルっとした線になってしまう。手描きのほうが味が出るというか、独特のクセが出るから好きですね。
単行本の表紙などの色もデジタルです。もともとああいう水彩っぽく塗るのが好きだったんですよ。あと岸田さんの塗り方も参考にしています。