――2D worksというセクションで『花咲くいろは』に携わられている金さんですが、具体的にどういった作業をされているのでしょうか?
金:
セルに貼られる印刷物、例えばシーンの中に登場する雑誌の表紙や誌面などの素材を作ることが主な仕事です。18話で蓮二が着ているスカジャンのデザインや、20話で登場する絵本の表紙などがそうですね。
――20話の絵本の表紙はとても素晴らしく、美術監督の東地さんも「自分ではこんなアイディアは出ない」と驚かれていました。
金:
そう言っていただけると嬉しいです。あの表紙はいろいろな絵本を見比べて、こんな感じかな!? と描きました。絵本の表紙なのでそんなに描き込む必要もなく、また自分の好きなように描けたので楽しかったですね。
――1話でどれぐらいの点数を担当されているのでしょうか?
金:
話数によりますが……少ないときは10点ぐらい、多いときは20点~30点ぐらいですね。
――金さんは最初から2Dの仕事を目指されていたのですか?
金:
T2スタジオに入社してから今年で7年目になりますが、本格的に2Dの仕事を始めたのは1年ぐらい前になります。それまでは撮影の仕事をしていました。
並木:
弊社で2D班を立ち上げたのは最近なんです。それまでは明確に2Dスタッフというのは決めていなくて、撮影をやりながら2Dの得意な人――それが金なのですが――が担当していました。
金:
撮影の仕事もやりがいはあるのですが、2Dのほうが得意で作品に貢献できそうというのと、描いていて楽しいんです。私も並木さんと一緒で絵を描くのは好きですから。
――作業はどういう風にされているのでしょうか。
金:
基本はレイアウトにあるアタリや参考資料を見ながら、2Dの素材を作っていきます。ただ中には白紙に「CGで!」と書かれている場合もあり(笑)、そういうときは一から自分で作ります。
主に「Adobe Photoshop」と「Adobe Illustrator」というソフトを使って作っていますが、撮影をやっていたこともあり「Adobe After Effects」もよく使いますね。また手で描いた絵をスキャンしてソフト上で色を塗ることもありますし、最初からソフトで作ることもあります。
――金さんがアニメ業界を目指されたきっかけは何だったのでしょうか?
金:
一番は日本のアニメが好きだからです。私は韓国の釜山出身なのですが、釜山ではアメリカのアニメと日本のアニメが放送されていました。個人的に日本のアニメが好きで、よく見ていました。大学ではプロダクトデザインを専攻していたのですが、2~3年生のときに、昔から自分が好きだったアニメの仕事に就きたいと思うようになったんです。
――韓国にもアニメ会社ありますよね?
金:
最近は韓国にも大きなアニメ会社がありますし、作品本数も日本ほどではないですが増えてきています。ただ当時(約10年前)は、あまり自分が求める会社もなくて……。それならばアニメの本場に行こうと決意したんです。
――こちらに知り合いの方などはいらしたのですか?
金:
それがまったくいなくて(笑)。日本の専門学校に入るため向こうでアルバイトをして学費を稼いでから来日しました。
――それはすごいですね! ちなみに一番印象に残っているアニメは何でしょうか。
金:
いっぱいありすぎて、どれかひとつを選ぶのは難しいですね……。個人的にはスタジオジブリの作品やマッドハウスさんの作品、特に『パーフェクトブルー』をはじめとする今監督の作品は好きです。ただ韓国ではメジャーな作品以外あまり放送されないんです。それで日本に来たとき、いろいろなアニメが放送されていることに感動しました。一生懸命ビデオを探した『デ・ジ・キャラット』のアニメが普通に放送されていて、ビデオにも録れるって(笑)。
――なるほど(笑)。金さんが『花咲くいろは』で好きなキャラクターは誰ですか?
金:
男性ならスカジャンのデザインをしたこともあり、蓮さん。女性なら緒花です。明るいしくじけないし、緒花のような前向きな性格は羨ましいです。あと実は緒花が使っているヘッドホンと同じものを持っているんですよ。最初にオープニングの映像を見たとき、これとまったく同じものを持ってる! って(笑)。
――それでは最後に、金さんにとって『花咲くいろは』はどんな作品ですか?
金:
並木さんと同じなのですが、元気になれる作品です。緒花たちを見て、私もぼんぼろうと思える(笑)。そしてこんな素晴らしい作品に関わることができて、本当に運がいいなと思っています。皆さんに迷惑をかけないようこれからも頑張っていきます。