――『花咲くいろは』では編集を担当されている高橋さんですが、そもそもアニメーションの編集とは、どういったお仕事なのでしょうか?
高橋:
「監督や演出さんたちと一緒にバラバラの素材を繋ぎながら、尺にあわせてひとつのフィルムにするのが主な仕事です。動きを繋いでいくのが編集の基本ですが、単純に繋ぐのではなく、シーンにあわせてセリフの間を足したり引いたりしながら、キャラクターの感情やシーンの空気感を演出していきます」
――30分のアニメの場合、作業時間はどれぐらいかかるものなのでしょうか。
高橋:
「編集マンや監督さんによって違うのですが、早く終わる場合は3~4時間。『花咲くいろは』はカットごとに細かく見ていきますし、最後に通して確認もするので、平均すると7時間ぐらいですね。ただ第1話は最初ということもあり時間がかかりました。それにキャラクターの声の感じもまだ分かりませんでしたから。もちろんオーディションなどに参加している安藤監督からはアドバイスをいただくので、それが指針になるのですが、『花咲くいろは』に限らず、やはり第1話は手探りで進める部分が多いです」
――編集作業はカッティングとも言われますが、やはり尺をカットしていく作業が中心になるのですか?
高橋:
「そんなことはなくて、セリフの間を足すこともありますよ。今回はストーリー重視の作品であり、お芝居も細かいので、止めの画で見せたり、間を足したりすることが多いです。もちろんコミカルな部分や会話に勢いがあるシーンは、テンポよくというのを心がけています。逆にアクションがメインの作品であれば、カットするタイミングも多く、もっと言えばアクションを飛ばしてしまうこともできる。作品によってさまざまですね」
――カットするのと間を足すのは、どちらが大変なのでしょうか。
高橋:
「これも作品やストーリー、演出によって変わってきます。アクション作品で尺が足らなくなったとき、単純に間を入れるだけではテンポが悪くなってしまう。逆にアクションシーンがほとんどない作品で尺をオーバーすると、どこをカットするかで頭を悩ませる。結局は全体のバランスを見ながら、編集することになります。『花咲くいろは』でも、一度繋いでみたら尺が4分もオーバーしたことがあって、どうしようかと思いました(笑)」
――高橋さんは『花咲くいろは』の前にも『CANAAN』や『Angel Beats!』に編集として参加されていますが、ピーエーワークス作品はいつから携わられているのですか?
高橋:
「ピーエーワークスさんが『鋼の錬金術師』(TVシリーズ)のグロス請けをされていたとき、編集として参加したのが最初です。それから『Angel Beats!』や『CANAAN』も一緒にやらせていただいて、今回も声をかけていただきました。
実は安藤監督とは、ピーエーワークスさんとお仕事をする前に『WOLF'S RAIN』という作品でご一緒させていただいているんです。そのとき監督は、各話の絵コンテ、演出を担当されていて、僕は編集助手をしていたので直接はお会いしていないのですが、“なんてカッコイイ絵コンテを描く人なんだろう”と、とても印象に残っています。これ初めて言うのですが、『CANAAN』でご一緒できると分かったときには、『安藤監督と仕事ができる!』とひとり感動していたんですよ(笑)」
――そうだったんですか!?(笑)。高橋さんが、映像業界に進もうと思われたきかっけは何だったのでしょうか?
高橋:
「両親が映画好きというのもあり、幼い頃からいろいろな映画を観ていたんです。目指すようになったのは高校生の頃。デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』に衝撃を受けて、自分も映像に関わる仕事がしたいなと思ったんです。それで映画の専門学校に進学しました。その学校の講師として『探偵物語』や『ゆきゆきて、神軍』などの編集を担当された鍋島 惇さんが来られていたんですが、鍋島さんの授業がとても面白く、編集という仕事に興味が湧いたんです。それで編集のゼミを専攻して、そのときの講師の方の紹介で今の会社に入りました」
――ちなみに小さい頃になりたかった職業はなんでしょうか?
高橋:
「特にコレというのはなかったですが、両親の影響もあり、映画と音楽は好きでした。特に母親が洋画好きだったので、映画館にしょっちゅう行っていましたね。父親は元バンドマンだったということもあり、どちらかと言えば音楽が好きで、ビートルズのレコードなどを一緒に聴いていましたね。その影響を受けていると思います。あと影響を受けたといえば、父親にB級ホラー映画ばかり見せられて、それがトラウマとなり、今でもホラー映画は苦手なんですよ(笑)。心理的に怖いのはまだ大丈夫なのですが、見た目的に怖いのはダメなんです」
――音楽の道に進もうとは思わなかったのですか?
高橋:
「高校生の頃、自分に音楽の才能はないなと自覚しました(笑)。あと映画の話を作るほうが面白いなと。実は今でも脚本、というとおこがましいのですが、話を考えるのが好きでちょくちょく脚本の走り書きみたいなことはしているんですよ。専門学校に入ったときも、最初は脚本家か監督になりたかったんです」