――体当たりでぶつかっていくということでしたが、今回の『花いろ』でもそうですか?
堀川:
「もちろん! ライターがむき出しで、自分の人生を刻んで書いてくれるものに対して遠慮するのは失礼ですからね。特に岡田さんの本からは、普通ならば隠してしまうようなことまで見えてきますから、それを受け取る側もがっぷり四つに組まなければいけないと思っています。ただそれにはまだ僕の力も及ばないし、ピーエーワークスにも力がないので、僕らがもっと力をつけたときに、むき出しの、本当の岡田麿里に応えれるようにはしたいです」
岡田:
「それは、いつかむき出しのままの作品をやらせてくださるということですか?」
堀川:
「もちろん。あ、でもそれは見ないほうが幸せかもしれない。僕の中の女性像は美しいものなので(笑)」
岡田:
「リアルな岡田は女性ではないと?(笑)」
堀川:
「そんなことはないけど、僕の中に女性に対する美しい幻想があるから。小説とかで女性のリアルな葛藤や情念を読むとクラクラしてしまうんだよね。でも逆にそういうリアルな女性像を描いてみたい気持ちもある。はたしてそれが僕のように幻想を求めているアニメファンに受け入れられるか疑問だけど、ピーエーワークスが作る作品なら見てみるかなって、共感してもらえる人が増えたら、むき出しの岡田作品を一度作りたいな」
岡田:
「純粋な作品になって、拍子ぬけするかもしれないですよ(笑)」
堀川:
「あれ? みたいな(笑)。いや、岡田さんはすごく純粋だと思うんですよ。それを隠して視聴者に対してそこまでサービスするの? もっと岡田さんをストレートに書いたらいいんじゃないのかな? って思うこともある。でもそういった、作品として、商品としてのバランスがとれたシナリオを書いてくれるから僕も監督も安心していられるんだと思う。岡田さんにシリーズ構成を頼む監督はみんな、どこかでコントロールしてくれている岡田さんの母性本能に甘えているんじゃないかな。でも、甘えを全部受け止めて、家では繊細で傷ついていそうな気もするんだよね。う~ん、やっぱり真実の岡田麿里像はよく分かりません」
岡田:
「結局、よく分からないが結論ですか(笑)」
堀川:
「分からないよぉ。でもたまに、チラッと繊細な面を見せるよね。あれ計算して見せていたら男は簡単に手のひらの上で、だよね(笑)」
岡田:
「男が手のひらの上だったら、もっといい生活してると思います(笑)」
――緒花のキャラクターは、どのようにして作られたのでしょうか。
堀川:
「ちょうどその頃、山口絵理子さんの『裸でも生きる』という本に出会ったんです。彼女の仕事に対する姿勢にひかれて、岡田さんにも「キャラクターの参考になれば」と送りました。僕の理想とする緒花は、パワフルで、何でも一生懸命に取り組む女の子。周りの人間を巻き込みながら空気を変えていくような……僕の想像だと、16歳の頃の岡田さんにも、そんな一面があるんじゃないかと思うんだけど」
岡田:
「いや、むしろ真逆ですね。高校時代の私はとことんネガティヴで自堕落で、この世のすべてを呪っていましたから。実家に帰ったときに、高校時代の日記を読みなおしてみたんですけど、ほとんどデスノートですよ(笑)」
堀川:
「本当に!? 日記なんて書いていたんだ」
岡田:
「デス成分はだいぶ薄くなりましたけど、今も書いてますよ」
堀川:
「やはりそういう積み重ねが、モノを書く人は特に、のちのち活きてくるんだよね」
岡田:
「緒花に話を戻すと、明るくて前向きな女の子って、私にとってはまぶしすぎるんですよ。なので、そこに『ウザさ』や『空気の読めなさ』を足してみました。私のような日陰の身でも、親しみがもてるように(笑)」
――民子や菜子は誰かをイメージされて書かれたんですか?
岡田:
「民子は、自分の夢が決まっていて、それに真っ直ぐ向かっていくキャラクター。『花いろ』という“仕事モノ”の作品には欲しいと思って作りました。あとは、この作品において私個人が思う『萌えキャラ』ポジションですね。菜子に関しては、私がこういう娘が主人公だったらいいかもって思っていたキャラクター。自分に自信がなくて、自信を持つために一歩踏み出したいと思っている子ですね。堀川さんに駄目出しされたので、今の立ち位置になりましたが(笑)」
――では書いていて楽しいキャラクターは?
岡田:
「書くのは難しいけど、個人的に孝一はすごく重要なキャラクターだと思う。彼は、緒花がメインで過ごす“仕事の世界”にはまったく関係のないところにいる。それでも、緒花には孝一の気配が常にあるんですよね。仕事をしている自分と、そうじゃない自分との架け橋になるキャラクター。注目してもらえると嬉しいですね」