――３話で作画監督を担当され、同時に原画もクレジットされてますがどのシーンを描かれたんでしょう？
石井：
その質問は羞恥プレイですね？（笑）。次郎丸の官能小説内の風呂場のシーンから、次郎丸が階段を転げ落ちるのを一同が見送っているシーンです。
――あのシーンはいろいろ話題になっていますよね。
石井：
自分の中ではギャグのつもりなんですよ。「こんな妄想シーンをここまで真面目に描くのか！」っていうツッコミを期待していたんですが、想像とは違った反応が多かった（笑）。次郎丸が出てくることでギャグが成立しているんですけれども、次郎丸は無視されてしまっていますからね。
第３話より。次郎丸がいることで妄想官能小説もギャグに!?
――３話では亀甲縛りもありました。
石井：
あの一連のカットも大変でした。原画は担当していないのですが、きちんと亀甲縛りに見せなくてはいけないと思い、アレコレ悩みました。線も多いですし縛られている緒花のカットも続きましたからね。実は原画を担当したのは女性なんですよ。なんてセクハラな話数なんだろうと（笑）。
でも３話と言えば、やっぱり次郎丸だと思うんです。次郎丸に始まり次郎丸に終わる。
第３話より。縄の線まで描かれた渾身の亀甲縛り。石井さんはこれで知恵熱が出たとか。
――確かにそうですよね。いろんなことができるキャラクターであり、『花咲くいろは』という作品の幅を広げたように思います。
石井：
黙っていればイケメンのメガネ男子なのに（笑）。でも変な顔も描いていて楽しいんですよ。安藤さんのコンテには非常に味のある表情が描かれていて、これは絶対に表現しなきゃ！ って。キャラクター表にはない顔のオンパレードになってしまいましたが、特に亀甲縛りがうまくできないシーンの次郎丸の顔は印象に残っていますね。本当はもっとやりたかったぐらい（笑）。でも女の子も守らないといけないですから、あまり暴走するのも…と自重しました。
第３話より。いい言い方をすれば表情が豊かな次郎丸。
――次郎丸はスネ毛もしっかり描かれていますしね。
石井：
あれもコンテに描かれていましたし、関口さんも描いていいって言ってくれていたんですよ（笑）。でも、そういった男としての崩れ具合が私は好きなんです。美形だけではない、ちょっと崩れたほうがキャラクター付けしやすいですからね。
――ちなみに次郎丸はどういうイメージで描かれたのですか？
石井：
ひと言で言うと「人間失格」のイメージです。海に身を投げてしまいますし、若い女の子を縛っている時点で本当の意味でも人間失格。そういうズレたところもいいなと。縛られながら、それを淡々と受け止めている緒花とのやり取りも面白いなと。
――やはり描いていて楽しいのは次郎丸ですか？
石井：
そうですね。３話を担当して愛着が湧いたというのと、これから先の話数でも緒花と比べて、そんなに目立つこともないと思いますから（笑）。もし好きに描いていいということになれば次郎丸をガッツリやりたいです。あと地味なんですが、豆じい（電六）が赤くなって、ポッと言うシーンは、すごく頑張って描きました。あまりしゃべらないキャラクターですけれども、あのシーンは豆じい最高の見せ場だと思っています。
第３話より。まだまだ謎の多い豆じい。赤くなるということは、縛られてみたい!?
――他に好きなキャラクターはいらっしゃいますか？
石井：
蓮二です。実は一番好きなキャラクターなんですよ。自分の中でいろいろな裏設定もあって、眉毛の傷は、昔こわい人たちと付き合っていたときにできたもの。喜翆荘（きっすいそう）に来た当初は、皆と距離を置いたんだけれども、不器用ながら徐々に打ち解けていった。そんなある日、昔に付き合っていたこわい人たちが殴り込んで来て……みたいな。
でも実際には変な一面もあるんですよね。徹のニヤケ顔を見て卵焼きを落とすとか（６話）。
第６話より。ニヤケる徹とそれを見て卵焼きを落とす蓮二。美味しそうな卵焼きの描き込みにも注目！
――それではこれから蓮二、次郎丸、豆じいに注目ですね？
石井：
徹も入れて板場のふたりに注目ですね。あとは皐月と縁かな。最近はドラマを見せるためにキャラクターを動かす作品にも興味があって、そういう意味では姉弟の親に対する気持ちがこれからどうなるのか、私自身も楽しみなんです。でも見てくださる皆さんは、それぞれ好きなキャラクターに注目してもらえればといいと思います。キャラクターそれぞれにドラマがありますからね。
